在宅酸素療法

在宅酸素療法とは

当院では酸素吸入が必要な方のための在宅酸素療法を行っています。以前は入院して行うことしかできなかった酸素吸入ですが、現在はご自宅で長期に渡って酸素吸入療法を行えるようになっています。在宅酸素吸入療法は、英語で『Home Oxygen Therapy』と表記されるため、それを略して『HOT(ホット)』と呼ばれることもあります。適応される症状や疾患には、慢性呼吸不全、肺高血圧症、慢性心不全などがあります。外出や旅行も可能ですから、酸素療法を行いながらクオリティ・オブ・ライフを低下させない生活を送ることができます。

在宅酸素療法が適応になる疾患

慢性呼吸不全の症状がある場合に在宅酸素療法が適応となります。慢性呼吸不全を起こす主な疾患には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核後遺症、 気管支拡張症、 間質性肺炎、 じん肺をはじめとした職業性肺疾患などがあります。
肺は空気から酸素を取り込んで二酸化炭素を排出するという生存に不可欠な機能を果たしています。肺がダメージを受けると血液の酸素量の低下や二酸化炭素の過剰をもたらします。血中の酸素濃度が低い状態が呼吸不全であり、呼吸不全の症状が1ヶ月以上続いた場合に慢性呼吸不全と診断されます。

在宅酸素療法の保険適用基

健康保険適用で在宅酸素療法を受ける場合には、下記の条件を満たす必要があります。
在宅酸素療法に健康保険が適用された場合、受診時に窓口で自己負担分をお支払いいただきます。

対象疾患

  • 高度慢性呼吸不全例
  • 肺高血圧症
  • 慢性心不全の対象患者
  • チアノーゼ型先天性心疾患

在宅酸素療法の効果

呼吸不全を起こしている肺疾患は治療で治すことができても、1度ダメージを受けて壊れてしまった肺の組織は再生できません。呼吸不全がある場合、低酸素血症となり、放置していると全身のさまざまな機能や臓器に酸素が不足してダメージを生じさせ、多くの疾患の発症リスクが上昇してしまいますし、命の危険にもつながる可能性があります。低酸素血症がある場合には、不足する酸素を補う酸素療法が必要です。
酸素療法を行うことで息切れや呼吸しにくさが解消し、全身の健康やさまざまな疾患の予防にも役立ち、入院回数の減少にもつながります。また、脳への酸素供給量が増加することで集中力・記憶力・注意力の改善が期待できます。

在宅酸素療法を
はじめるまでの流れ

1診察

症状や経過について丁寧に問診し、必要な検査を行い、経過を観察した上で在宅酸素療法が適していることを確認します。患者様、そして同居されているご家族に病気の状態、在宅酸素療法についてわかりやすくご説明します。在宅酸素療法は、患者様やご家族の正しいご理解が重要になる治療法ですから、ご質問にもしっかりお答えしています。些細なことでも気軽にご質問ください。

2処方とトレーニング

必要な酸素吸入量や時間について、患者様とじっくり相談した上で決定します。その上で、ご自宅で酸素療法を行うための機器の取り扱い方法、生活指導、注意事項、緊急時の対応などを丁寧にご説明し、トレーニングを行います。

3機器の配送・配置・点検

酸素療法で使用する機器はご自宅に配送されます。医師の指示通りに設置・点検して、在宅酸素療法をスタートさせます。

4月1回の定期的な受診

在宅酸素療法を行うためには、1ヶ月に1回以上の受診が必要です。受診した際には、使用状況、日常生活状況、呼吸の状態などを確認しています。気になることがありましたら何でも遠慮なくご質問ください。

在宅酸素療法の機器について

酸素はカニューラというチューブを通して、鼻に届きます。カニューラは酸素濃縮器や酸素ボンベに接続されていて、そこから酸素が送られてきます。酸素濃縮器は室内の空気中から酸素を濃縮して送る機器です。外出の際には酸素濃縮器ではなく、携帯用酸素ボンベによる酸素供給を行います。

ご注意

決められた量の酸素を正しく吸入することで、全身が必要とする十分な酸素が届きます。それによって心臓をはじめとした全身の臓器や筋肉などの機能や状態が守られます。患者様が必要とする量の酸素が補われるよう、薬のように適切な処方がされていますので、息切れがするなどで自己判断によって酸素流量計を変更するのは危険です。
また、酸素を供給するため安全を確保する意味で、火気からは2メートル以上、必ず離れる必要があります。そして、喫煙に関しては着火する必要がない電子タバコも含めて厳禁ですから、酸素吸入治療を受けながらの喫煙は絶対にしないでください。

在宅酸素療法の
健康保険適用基準

在宅酸素療法は健康保険の適用基準が決められています。医師の判断によって、パルスオキシメーターで酸素濃度が低下している場合には在宅酸素療法を健康保険適用で受けられます。パルスオキシメーターは指先に装着することで痛みや不快感なく体内の酸素量が簡単にわかる検査機器です。

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