生活習慣病

生活習慣病

生活習慣や体質などによって発症する慢性疾患のことで、代表的なものに高血圧症、脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、高尿酸血症(痛風)、メタボリックシンドロームなどがあります。
ほとんど自覚症状なく進行し、ある日突然、深刻な合併症を起こす可能性が高く、狭心症や心筋梗塞、脳出血などを起こす動脈硬化は、こうした生活習慣病によって進行します。また、腎臓などにも大きなダメージを蓄積させてしまいますので、健康診断の結果などを確認して早期に適切な治療を受けることが重要です。
生活習慣病という名前の通り、こうした病気は早期であれば生活習慣を見直して改善することで進行を止めることができます。当院では患者様のお話をじっくりうかがった上で、できるだけストレスが少なく効果的に改善を進められるようきめ細かく具体的な生活指導を行っています。

生活習慣を見直す項目

高血圧症

血圧が高い状態が続いて血管への負担が続き、動脈硬化を進行させる病気です。心疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳出血といった脳血管障害などの深刻な発作を突然起こす原因であり、自覚症状に乏しいため注意が必要です。頭痛や耳鳴りなどの症状を起こすこともありますが、こうした自覚症状は心疾患や脳血管障害がすでに生じていてその症状として起っていることもあります。

高血圧の原因

90%以上が生活習慣や環境、体質などによって生じる本態性高血圧です。残りは、病気や薬の副作用として生じる二次性高血圧であり、腎疾患、内分泌疾患、大動脈縮窄症、睡眠時無呼吸症候群などの疾患や服用している薬の副作用として高血圧を生じています。高血圧の副作用を起こす薬は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、ステロイド、漢方薬など、一般的によく使われる薬剤が多いため、受診の際にはお薬手帳などをご持参いただいて、普段服用している薬を医師が正確に把握することが必要になります。二次性高血圧は原因疾患の治療や薬の処方の変更で治すことができます。

高血圧治療

日本高血圧学会では、高血圧の治療を開始する血圧の基準値を、診察室血圧で140/90㎜Hg、家庭血圧で135/85㎜Hgと定めています。家庭ではよりリラックスした状態で計測できるため正確な値が出やすいとされていて、治療の際には価値血圧を優先して用います。
また、治療を受ける際の降圧目標値は、75歳未満の成人で130/80㎜Hg未満(家庭血圧125/75㎜Hg未満)、75歳以上が140/90㎜Hg未満(家庭血圧135/85㎜Hg未満)とされています。

ご自宅で血圧を計測しましょう

高血圧治療血圧の推移や現在の数値を知るためには、ご家庭でこまめに血圧を測ることがとても重要です。どんな生活習慣で血圧が上がりやすいかも推測できるため、効果的な改善につながります。毎日、同じ時間、同じ場所で計測するとより正確な指針として使えます。生活習慣改善を続けていくためにも、こまめな計測は不可欠です。

生活習慣の改善

生活習慣の改善減塩、カロリーコントロールによる肥満解消と適正体重の維持、週3回以上行う有酸素運動、節酒・禁煙などに加え、休息や睡眠をしっかりとる、ストレスを解消することも重要です。生活習慣の改善は続けなければ意味はありませんので、がんばり過ぎずに無理のない内容を心がけましょう。また、疾患の状態などによって必要な改善内容は大きく変わります。逆効果になってしまわないよう、医師と相談して内容を決めましょう。

降圧剤の服用

生活習慣改善だけでは十分な効果を得られない場合には、血圧を下げる降圧剤の服用が必要になります。主な降圧剤だけでも、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬、β遮断薬などがあるため、当院では患者様の状態やライフスタイルなどにきめ細かく合わせた処方を行っています。なお、服薬を開始しても生活習慣改善は続けることが不可欠です。

脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症血液中の脂質には、LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)があって、LDL(悪玉)コレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)が多い状態が高脂血症です。HDL(善玉)コレステロールは血液中の余分なコレステロールを回収する役割を担っているため、少ないと問題が起こします。こうしたことから、高脂血症にHDL(善玉)コレステロールが少ない状態を加えて脂質異常症と呼ばれるようになっています。
血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が過剰になると、血管の内側に粥状のプラークになって付着し、動脈硬化や動脈の狭窄・閉塞を起こしやすくなります。脂質異常症は自覚症状がないまま進行し、ある日突然、狭心症や心筋梗塞といった心疾患や、脳出血などの脳血管障害を起こす可能性が高くなってしまいます。

脂質異常の基準値

高LDL(悪玉)コレステロール血症 ≧140mg/dl(120~139 mg/dlは境界域)
低HDL(善玉)コレステロール血症 <40 mg/dl
高トリグリセライド(中性脂肪)血症 ≧150 mg/dl

脂質異常症の治療

治療

生活習慣の改善を行い、それで不十分な場合には薬物療法を併用します。血中の脂質は食事によって大きく変化するため、食事療法は特に重要です。脂質異常症のタイプによって控える食品や積極的にとりたい食品が変わってきますので、定期的に検査を受けて適切な改善を続けましょう。食事療法以外にも、適切体重を保って代謝や血行を改善するための適度な運動、そして禁煙なども必要です。

高LDLコレステロール血症

悪玉コレステロールが過剰なタイプです。動物性脂肪の摂取量を減らし、食物繊維を積極的にとるようにします。糖尿病や肥満を合併している場合、糖質の多い果物は1日1回、少量だけとるようにしてください。サバやイワシなどEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸を多く含んだ青魚は積極的にとるようにします。

高トリグリセライド血症

中性脂肪が多いタイプで、食べ過ぎ・糖質の過剰摂取・アルコール摂取を制限することが有効です。

低HDLコレステロール血症

善玉コレステロールが少ないタイプで、摂取する脂肪の種類に注意が必要です。マーガリンやショートニングといったトランス脂肪酸をできるだけ避け、リノール酸やアラキドン酸の摂取を減らすために植物油の摂取量もできるだけ減らしてください。

脂質異常3症の治療薬

薬物療法が必要な場合も、タイプによって処方される薬剤が変わります。筋肉痛や肝障害などの副作用を起こす可能性がありますので、ライフスタイルなども考慮した上で処方し、経過を慎重に確認します。

糖尿病

糖尿病血液に含まれるブドウ糖が過剰になって血糖値が高い状態が続く病気です。感染症などをきっかけにインスリンが分泌されなくなる1型と、肥満や運動不足などの生活習慣が原因となって起こる2型に分けられます。ブドウ糖は食物に含まれる糖質が消化分解されて脳を含む全身のエネルギーになりますが、過剰になってしまうと血管に大きなダメージを与え続けます。他の生活習慣病と同様に動脈硬化を進行させて脳血管障害や心筋梗塞などの発症リスクを上げるだけでなく、糖尿病特有の深刻な合併症によって失明、透析が必要になる腎不全、足の壊死などを起こす可能性もあります。
血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用し、肝臓などでグリコーゲンに合成するためには、膵臓から分泌されるホルモンのインスリンが欠かせませんが、インスリンが不足したり、その働きが弱くなったりすると血中のブドウ糖が過剰になって高血糖が続き、糖尿病を発症します。

糖尿病の治療

糖尿病は完治させる治療法こそありませんが、適切な生活習慣改善と薬物療法によって血糖値のコントロールが可能であり、それによって悪化を防ぐことができますし、動脈硬化や合併症の進行リスクも低減できます。血糖のコントロールは続けていくことが必要ですから、定期的に受診して検査を受け、状態に合わせた治療が重要です。快適な人生を送るためにも、医師としっかり相談してライフスタイルに合わせた生活習慣改善や薬物療法を続けましょう。

食事療法

血糖値を下げることを基本にしますが、バランスを考慮して必要な栄養素をきちんととることが重要です。同じものを同じ量だけ食べても、食べる順番を変えることで血糖値の上がり方は変わってきます。また、外食時もメニュー選びを工夫するなど、ご自分に合った上手なコントロール法を身に付けましょう。

運動療法

運動療法筋トレで筋肉量を増やして基礎代謝や血流を改善させ、軽い有酸素運動を続けることで血糖値が下がり、インスリンの効果も上がります。合併症の状態や他の疾患などがある場合には適切な運動の内容が変わってきますので、医師と相談して適切なプログラムを組んで行うようにしてください。

薬物療法

高血圧の原因生活習慣病である2型糖尿病は、生活習慣の改善で十分な効果が得られない場合に薬物療法を併用します。血糖値を下げる薬を主に使いますが、膵臓への負担を下げるためにインスリン注射を行うこともあります。

高尿酸血症(痛風)

高尿酸血症(痛風)血液中の尿酸が過剰な状態が続いている高尿酸血症では、足の親指などに激しい痛みを生じさせる痛風発作を起こすことがあります。尿酸値が高くても痛風発作を起こさないこともありますが、その場合も腎臓などにダメージを蓄積させてしまうため、健康診断などで高尿酸状態を指摘されたら早めに適切な治療を受けてください。

痛風発作

血中の尿酸が過剰になると鋭い針状の結晶になって足などの関節にたまります。その結晶によって関節炎を起こすのが痛風発作です。歩けないほど強い痛みを生じ、数日で痛みがピークに達して1週間から10日程度で痛みが消えていきます。適切な治療を受けないと繰り返し痛風発作を起こして関節の変形を起こすこともあります。
痛風発作は尿酸値が高いと起こりやすく、さらに急激に尿酸値が変わった時にも起こりやすい傾向があります。また、激しい運動も痛風発作を起こす要因になります。
高尿酸血症の適切な治療を続けて尿酸値を低く保ち、尿酸の結晶が完全に溶けるまでしっかり治療を続けることが重要です。

尿酸値とプリン体

プリン体は細胞の核酸を構成する成分で、エネルギー源としても利用されますが、代謝すると尿酸をつくるためプリン体の代謝が過剰になると高尿酸状態が続きます。特に内臓脂肪が多いと遊離脂肪酸の分泌が増加して肝臓のプリン体代謝が活発になってしまうため、肥満は高尿酸血症や痛風発作の危険因子です。

高尿酸血症の治療

痛風発作が起きている間は尿酸値を下げる治療が逆効果になって症状を悪化させてしまうため、炎症を鎮める治療を行って、状態が落ち着いてから尿酸値を下げる治療を開始します。痛風発作を起こしたことがない場合も血清尿酸値が9.0mg/dl以上の場合は治療が必要です。また、他の生活習慣病を合併している場合などでは8.0mg/dl以上での治療が必要とされています。
高尿酸血症は、排泄に問題がある尿酸排出低下型、過剰につくられる尿酸産生過剰型、その両方がある混合型に分けられ、それに合わせて尿酸排泄促進薬や尿酸生成抑制薬を処方します。また、排泄を促すために積極的な水分摂取も重要です。尿pH6.0未満の酸性尿の場合には、、尿をアルカリ性にする薬を処方することで腎疾患や尿路結石予防につなげます。

生活習慣

カロリーをコントロールして肥満を解消し、適正体重を保ちます。激しい運動は尿酸値を上げやすいため控え、軽い有酸素運動を習慣的に行う必要があるため、医師と相談して行うようにしてください。水分をこまめにとるのは重要ですが、他の疾患がある場合には摂取する適切な水分量が変わりますので、医師の指示を守ってください。

食事

食事では特にレバーや魚卵などプリン体を多く含むものを控えます。プリン体が多いビールだけでなく、アルコール類は全て尿酸値を上昇させるため、節酒を心がけてください。尿酸値を下げる・痛風発作を防ぐ食材などが紹介されていることがありますが、それだけを過剰にとるのではなく、栄養バランスがとれた食事をすることが効果的です。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドローム内臓脂肪型肥満で、血圧・血糖・血中脂質のうち2つ以上が基準値を超えている状態がメタボリックシンドロームです。メタボリックシンドロームの場合、血圧・血糖・血中脂質の検査数値がそれほど悪くなくても動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞や脳血管障害などを起こすリスクが大幅に上がってしまいます。お腹がぽっこり出ているのが内臓脂肪型肥満の特徴であり、ウエスト周囲径を測定して診断します。メタボリックシンドロームと診断されたら、動脈硬化を進行させないためにもできるだけ早く適切な治療をはじめることが重要です。

メタボリックシンドロームの診断基準

必須項目

ウエスト周囲径を測定し、内臓脂肪型肥満かどうかを判断します。立位で軽呼気時におへその辺りの周囲径を計測します。

男性 ≧85cm
女性 ≧90cm

選択項目

ウエスト周囲径が基準値以上あって、血圧・血糖・血中脂質の数値が、下記の2項目以上に該当している場合にメタボリックシンドロームと診断されます。

収縮期(最大)血圧 ≧130mmHg
拡張期(最小)血圧 ≧85mmHg
高トリグリセライド血症 ≧150mg/dl
低HDLコレステロール血症 <40mg/dl
空腹時高血糖 ≧110mg/dl
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